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本書は、ドイツの作曲家フェリックス・メンデルスゾーンが作曲したピアノ独奏曲『無言歌集』の全49曲を収録した楽譜です。全音楽譜出版社が発行する「全音ピアノライブラリー」シリーズの一冊として刊行されており、ピアノ学習者や愛好家が演奏に用いることを主目的としています。内容は、作品19bから作品102までの8巻と遺作1曲を網羅し、各曲には演奏の助けとなる運指記号やペダル指示が校訂者によって付されています。楽曲の背景や音楽理論的な分析よりも、演奏実践に重きを置いた構成となっており、ピアノのレッスンや発表会、趣味での演奏など、幅広い場面で活用される実用的な一冊と言えます。
本書が発売された1955年頃は、戦後の復興期にあたり、人々の生活に文化的な潤いを求める機運が高まっていた時代と考えられます。特にピアノは豊かな家庭の象徴であり、子供の情操教育の一環として「お稽古事」の人気が上昇し始めた時期でした。しかし、当時、良質なクラシック音楽の楽譜、とりわけ輸入版は高価で入手が困難でした。そのような状況下で、全音楽譜出版社が国内で校訂・出版した本書は、手頃な価格で信頼できる品質の楽譜を求めるピアノ学習者や指導者のニーズに完全に応えたものと推測されます。メンデルスゾーンの無言歌集は、ロマン派特有の美しい旋律を持ちながら、技術的に中級レベルの学習者にも取り組みやすい楽曲が多く、教材としての需要も高かったはずです。網羅性の高い「全曲集」という形式も、学習者が自分のレベルに合わせて曲を選べる利便性を提供し、他の分冊楽譜との差別化要因として機能したと考えられます。
では、なぜ売れ続けたのか?

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