📬 ロングセラー通信
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本書は、作家・佐藤愛子が90歳を超えて執筆したエッセイ集です。月刊誌『女性セブン』での連載をまとめたもので、高齢者としての自身の日常生活や心境を、歯に衣着せぬ筆致で綴っています。内容は、身体の衰えからくる不便さへのいら立ち、現代社会の風潮や人々の言動に対する辛辣な批判、そして自身の死生観にまで及びます。「長生きはめでたい」という世間一般の価値観に対し、「何がめでたい」と真っ向から異を唱える姿勢が、本書の根幹をなしています。読者は、著者の怒りや嘆きを通して、老いることのリアルな一面に触れると同時に、何ものにも臆さず本音を貫く痛快さと、底流にある人間的な温かさを感じ取ることができます。
2016年の発売当初に本書が広く受け入れられた背景には、当時の社会的な空気と読者ニーズが深く関わっていると考えられます。当時、日本は高齢化が加速し、「老い」や「終活」への関心が高まる一方、メディアで語られる老後は穏やかで美しいものという理想論が主流でした。しかし、現実を生きる多くの高齢者やその家族は、その理想と現実のギャップに潜在的な不満や違和感を抱えていたと推察されます。
そこに登場したのが、「九十歳。何がめでたい」という、建前を打ち破るタイトルの本書でした。これは、多くの人が口に出せずにいた「老いは決してめでたいことばかりではない」という本音を代弁するものでした。他の類書が「心構え」を説く中で、本書は「不満」や「怒り」をユーモラスに描き出すという明確な差別化に成功しました。また、SNSの普及により「いいね」を求める建前社会に疲れていた若い世代にとっても、著者の痛快な毒舌は新鮮なエンターテイメントとして響き、世代を超えた支持を集める要因になったと考えられます。
では、なぜ売れ続けたのか?
