📬 ロングセラー通信
毎日1冊、10年売れ続ける本の秘密をお届け。
無料・いつでも解除可能
本書は、呪力と呼ばれる超能力を持つ人々が暮らす1000年後の日本を舞台にしたSFファンタジーです。物語は、神栖66町という管理された集落で育った少女・渡辺早季の視点から、彼女が仲間たちと共に成長していく過程を描きます。のどかで牧歌的な日常の裏に隠された、社会の禁忌や失われた歴史の謎が、子供たちの冒険をきっかけに徐々に暴かれていきます。種の存続のために構築された社会システム、異種族との関係、そして人間の本性といった重厚なテーマが、壮大な世界観の中で展開されます。これは、ある世界の成り立ちと崩壊、そして再生を、一人の人間の生涯を通して描き出す壮大な叙事詩の序章と言えるでしょう。
2011年当時に本書が売れた背景には、まず著者である貴志祐介氏のブランド力が挙げられます。『黒い家』などでミステリー・ホラーの第一人者として確固たる地位を築いていた著者が、全く異なるジャンルの長編SFファンタジーを手がけたことへの期待感が、既存のファン層に強くアピールしたと考えられます。また、2008年刊行の単行本は高価で手に取りにくい側面がありましたが、2011年の文庫化によって価格的なハードルが下がり、一気に読者層が拡大しました。同時期のエンタメ市場では、壮大な世界観を持つ物語への需要が高まっていたことも追い風となったと推測されます。単なるディストピアSFではなく、日本の原風景を思わせる舞台設定と、友情や成長を描く青春小説の要素を融合させた点が、他の類書との差別化となり、幅広い読者を獲得する要因になったと考えられます。
では、なぜ売れ続けたのか?
