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本書『磁器辨 下』は、江戸時代初期の豪商であり文化人でもあった角倉素庵による磁器の解説書を、1902年に国立図書館(現在の国立国会図書館の前身の一つ)が所蔵する資料を基に編纂・出版したものです。本書が扱うのは、磁器の分類や鑑定に関する体系的な知識と考えられます。「下」巻であることから、上巻と合わせて中国渡来の「唐物」や日本の「和物」など、多岐にわたる磁器を産地や年代、様式といった基準で整理し、その特徴や見分け方を論じていると推測されます。写真技術が未発達な時代において、言葉と図解によって磁器の鑑識眼を伝えることを目的とした、専門的なテキストです。単なる美術鑑賞の手引きではなく、骨董としての価値判断の基準を提供する実用的な側面も持っていたと考えられます。
本書が発売された1902年頃の日本は、西洋化が一段落し、自国の伝統文化を再評価する機運が高まっていた時代と考えられます。特に欧米でジャポニスムが流行したことを受け、富裕層や知識人の間で日本の古美術、とりわけ陶磁器への関心が急激に高まっていました。しかし、その鑑定知識は一部の専門家や旧家の間で口伝や秘伝として受け継がれることが多く、体系化された情報へのアクセスは限られていました。このような状況下で、江戸初期の大学者・角倉素庵の著作という歴史的権威と、「国立図書館コレクション」という公的機関の信頼性をまとった本書の登場は、まさに待望されていたものだったと推測されます。急増する新たなコレクターや研究者にとって、信頼できる鑑定の「教科書」として機能し、熱心な需要に支えられて売れたと考えられます。これは、単なる個人の見解をまとめた類書とは一線を画す、大きな差別化要因だったと言えるでしょう。
では、なぜ売れ続けたのか?
