📬 ロングセラー通信
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本書は、著者の東海林さだお氏が自身の早稲田大学時代を中心とした青春の日々を、独特のユーモアを交えて描いたエッセイ集です。物語は、漫画研究会での仲間たちとの交流、極度の貧乏生活、アルバイトの失敗談、異性への淡い思いといった、ごく個人的で些細な出来事で構成されています。そこには劇的な成功体験や人生の教訓はほとんどなく、むしろ怠惰で、見栄っ張りで、どこか間が抜けた「ショージ君」の姿が赤裸々に綴られています。読者は、昭和30年代という特定の時代を舞台に繰り広げられる、普遍的でどこか懐かしい「ダメな青春」の風景を、肩の力を抜いて追体験することができます。
本書が発売された1980年頃は、高度経済成長期が終わり、社会が物質的な豊かさを手に入れた一方で、画一的な価値観への息苦しさも生まれ始めた時代と考えられます。猛烈に働くことだけが是とされた価値観が揺らぎ始め、若者の間ではシラケ世代や三無主義といった言葉に象徴されるような、脱力した空気が生まれていました。多くのエッセイが文化人による教養や成功者の体験談を語る中で、本書は徹底して「何者でもない若者」の「無意味でくだらない日常」を、愛おしく、そしてユーモラスに描きました。この「頑張らないこと」「ダメなこと」を肯定する視点は、当時の若者たちの隠れたニーズに合致し、大きな共感を呼んだと推測されます。成功物語からの解放を求める読者にとって、本作が提示した笑いは、新鮮な救いとして受け入れられたのではないでしょうか。
では、なぜ売れ続けたのか?
