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本書は、英国の「タヴィストック人間関係研究所」が、公表されているような社会科学の研究機関ではなく、世界規模で大衆の心理を操作し、社会をコントロールするための秘密機関であると告発する一冊です。著者のジョン・コールマンは、元MI6(英国秘密情報部)の諜報員であった自身の経歴に基づくとし、同研究所が意図的に社会の価値観を変容させてきたと論じています。
具体的には、ロックミュージックやドラッグカルチャーの普及、マスメディアによる情報操作、教育システムの変革などを、大衆を無気力化・断片化させるための洗脳計画の一環として位置づけています。ビートルズやローリング・ストーンズといった著名な固有名詞を挙げながら、それらが如何にして大衆心理を誘導する道具として利用されたかを解説し、現代社会の背後に存在する巨大なコントロール網の存在を主張する内容となっています。
本書が発売された2006年頃は、9.11同時多発テロやイラク戦争を経て、政府やマスメディアの公式発表に対する懐疑的な見方が世界的に広がっていた時代と考えられます。日本国内でも、社会の閉塞感や格差拡大を背景に、既存の権力構造への不信感が潜在的に高まっていました。このような状況下で、多くの人々が感じていた漠然とした不安や社会の不可解な動きに対して、明確な「敵」と「構造」を提示する物語への需要が生まれていたと推測されます。
本書は、そうした読者ニーズに対して、他の類書とは一線を画す二つの強力な要素を提供しました。一つは、著者の「元MI6諜報員」という肩書きがもたらす「内部告発者」としての権威性です。これにより、単なる憶測ではない「裏付けのある情報」という印象を与えました。もう一つは、「タヴィストック研究所」という一つの黒幕を軸に、音楽、メディア、政治といった広範な事象を網羅的かつ体系的に結びつける物語の壮大さです。断片的な陰謀論ではなく、世界のすべてを解き明かす「解答集」のような体裁をとったことが、当時の読者の知的好奇心を強く刺激し、大きな支持を集める要因になったと考えられます。
では、なぜ売れ続けたのか?
