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本書は、平安時代の仮名書道の最高傑作の一つと評価される『高野切第一種』を、書道学習者向けに編纂した手本です。伝承では紀貫之の筆とされるこの名筆を、原寸大の写真で収録し、鑑賞だけでなく臨床(手本として書写すること)に利用できるよう構成されています。各ページには、くずし字を活字に直した「釈文」が添えられ、書かれている和歌の内容を理解しながら学べます。さらに、筆の運びやリズムを視覚的に捉えるための「骨書」や、筆遣いの細部を確認できる部分拡大図も掲載されています。専門家による解説も付随しており、作品の歴史的背景や書風の特質を体系的に学ぶことが可能です。本書は、古典の名筆の美を多角的に分析し、学習者がその技術と精神性を吸収するための学習教材として機能します。
本書が1993年当時に売れた理由は、高品質な古典手本を個人が手軽に入手できる「パッケージ化」に成功した点にあると考えられます。当時、書道は人気の高い習い事であり、学習者は古典の臨書を必須としていました。しかし、良質な手本は高価な全集に限られることが多く、個人が特定の古典だけを学ぶには経済的・物理的なハードルがありました。一方で、安価な手本は印刷の質が低い、解説が不十分といった問題点を抱えていました。本書は、書道出版の権威である二玄社が、平安仮名の最高峰とされる『高野切第一種』に絞り込み、高品質なカラー図版、骨書、詳細な解説を付与して一冊にまとめた点が画期的でした。これは、高価な全集と安価な手本の間に存在する「高品質かつ専門的でありながら、個人で買いやすい」という市場の空白を的確に突いた戦略と言えます。「日本名筆選」というシリーズの第1巻として刊行されたことも、学習者の継続的な購入意欲と信頼感を醸成し、ヒットにつながる大きな要因となったと推測されます。
では、なぜ売れ続けたのか?
![高野切第一種[伝紀貫之筆] (日本名筆選 1)](/_next/image?url=https%3A%2F%2Fm.media-amazon.com%2Fimages%2FI%2F51q%2BXMuiLjL._SL500_.jpg&w=384&q=75)