📬 ロングセラー通信
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本書は、数式や専門用語を極力用いずに、経済学の根底にある「ものの見方・考え方」そのものを解説する入門書です。世界的な経済学者である著者が、アダム・スミスの思想を基軸に据えながら、市場経済がどのように機能し、人々の生活にどう影響を与えるのかを平易な言葉で解き明かします。価格メカニズムの働きと限界、効率性と公正性の関係といった、経済学が探求する核心的なテーマを扱っています。単なる理論の紹介に留まらず、著者の人間や社会に対する温かい眼差しが貫かれており、読者が経済現象を自分自身の問題として捉え直すための、思考の座標軸を提供することを目的としています。
本書が発売された1989年は、バブル経済の絶頂期にありました。株式や土地への投機が過熱し、「財テク」が流行語となるなど、国民の経済への関心は空前の高まりを見せていたと考えられます。このような時代背景の中、多くの人々は目先の利益を追うだけでなく、経済の根源的な仕組みを本質から理解したいという知的な欲求を抱いていました。しかし、市場には実用的な投資本や難解な専門書が多く、その間を埋める書籍は少なかったと推測され���す。本書は、世界的な権威である宇沢弘文氏が、数式を使わずに「経済学の考え方」そのものを説いた点で、読者のニーズに合致しました。単なる時事解説やテクニック論ではない普遍的な知を提供したことが、熱狂の中にあった当時の読者に冷静な視点を与え、広く受け入れられた理由ではないでしょうか。岩波新書という権威あるレーベルも、その信頼性を後押ししたと考えられます。
では、なぜ売れ続けたのか?
